メタファ、フラットデザイン、そして、UX。
👩🏻💻 概要 - PCは現実の行為を、画面上で行える体験として提供していたが、インターネットが発展してそれが変わった。フラットデザインをベースとするUIデザインが標準化され、体験をゴールとしてUXデザインからアプローチする手法が効果的だと考えられている。
PCは知的増幅装置
エンジニアやデザイナーはPCの進化の本質を、よりよい体験を得るための知的増幅装置(自分のできることを拡張するもの)としての進化、歴史として捉える必要がある。
PCが知的増幅装置として一般化したのは、親しみやすいグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI = UI)を提供したこと。そのわかりやすいUIを構成する要素となったのが「メタファ」を採用したことだった。
メタファ
メタファとは「比喩/見立てること」で、PCを起動して表示される画面を「デスクトップ」と呼んだり、データを「ファイル」という単位で表現し、「フォルダ」でそれを管理し、いらなくなったら「ゴミ箱」に入れるというようなこと。普段の生活においての机やファイルなどを、PCでグラフィカルに見立てて、体験を伝わりやすくするためのもの。
アプリはまさに「見立て」で、ユーザーがPCを単純な計算機として認識せずに、自分の目的に合わせた体験が受けられる便利な装置として認識できるようになっている。
AppleのMacintosh
Appleはこれを理解してMacintoshにたくさんのアプリを標準搭載していた。ユーザーに計算機をアプリで知的でおしゃれな道具に見立てたことで、「自分のアナログな仕事がPCでできるかも」と感じさせた。PCをデザインして、自由で無限な可能性を制限し定義することで、PCの魅力を伝わりやすくした。
デザインで体験を制限定義する
重要なことは、PCの万能性をユーザーにそのまま提供しても、「何でもできる=何も提供していない」という結果になるということ。この万能さをターゲットになるユーザーに対して、適切に見立てて体験を与えられるように定義したり、その役割をデザインする人が、必然的にPCの普及とともに求められた。
ということで、デザイナーとデザイン的発想が重要になった。「デザイン思考」という言葉がよく使われるのも同じことで、それを研究実践したのは心理学者だった。
PCはメタメディア
「メタメディア」は音声、テキスト、画像、ビデオなどの既成メディアの全てを統合し、ユーザーが活用できるようにするという考え方の名称で、「あらゆるメディアを超えたメディアとしてPCが存在する」、というアラン・ケイによって「PC=メタメディア」提唱された概念。
PCには常にメタメディアの特性を生かした体験を可能にする、アプリやUIが求められることを示唆している。
メタファの限界、そしてフラットデザインへ
コンピュータはメタメディアであり、それを定義することがデザインであり、その方法として「見立て=メタファ」が使われてきた。だけど、インターネットの発展により、メタファに限界がやってくる。
メタファのないtwitter
たとえばtwitterには見立てがない。「つぶやき」、、、みんなでつぶやくことが面白いという価値感は、現実世界の体験にはない。インターネットが普及し始めた当初は、コミュニケーション系コンテンツは「掲示板」という見立てをしていたが、今ではそういう表現は少なくなった。TwitterもFacebookも、SNSにカテゴライズされるが、たとえばニコ動は、これまでの何かにたとえにくい。
こんな感じで「現実→見立て」の図式で説明しにくいものが増えてきた。メタメディア×インターネットのポテンシャルを活かすためには、メタファは邪魔になってしまうことになる。
フラットデザインの誕生
新しいアプリやサービスが現実で見立てられるものがないなら、そのUIでどんなメタファを利用するかは検討できなくなるし、無理なメタファを利用すれば誤解を生む。そこで採用されたのが、「フラットデザイン」というUIの考え方。
フラットデザインとは、単色に近いUIのコンポーネントを使った見た目上のデザインのこと。
スキュアモーフィズム
フラットデザイン以前は「スキュアモーフィズム」といって、現実で高級感のあるような物を参考にしたような表現が行われてきた。スキュアモーフィズムは、ライトユーザーにとっては、現実で見たことがあるような素材感で表現されていたり、そこからさわれる場所かそうでないのかの判断がつきやすく、親しみやすい。
だけど、現実世界にはない体験のアプリや見立てられないものの場合には、スキュアモーフィズムでは壁にぶつかる。
フラットデザインは流行じゃない
スキュアモーフィズムとフラットデザインはデザイナーのスタイル論になることが多いけど、スキュアモーフィズムは流行の話ではなく、メタファという流れの結果であり、メタファの導入によってコンピュータのメタメディアという性質に価値を与えていた。
同じように、フラットデザインはメタメディアであるPCに、メタファなしで新しい価値を与えようとする手法であり、流行的なスタイリングの話じゃない。
フラットデザインは原則的にメタファを使わない。フラットデザインはメタメディアの表現の自由度と柔軟性の高さを駆使して、活かしていこうとする流儀。
脱メタファ、それはUXをデザインすること
メタファを脱して、人間が価値を感じる体験をゴールとしてメタメディアを定義し、設計していこうという流れの結果、体験をデザインするUXデザインの重要性が問われるようになった。UXの価値をあらかじめ定義できれば、それを引き出すためのUI設計が明確になる。
メタメディアという万能性と、最終的に人間と関わる体験を生み出すということを考えると、UXデザインを軸にしたUI設計は合理的で、結果につながりやすい方法であると言える。
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参考
融けるデザイン ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論 | 渡邊 恵太 | 工学 の読書メモをベースにしたもの。